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先日、年金制度に関する法改正があって、いわゆる「106万円の壁」がなくなることが決まりました。

◆「106万円の壁」って何だ?

さて、ではこの「106万円の壁」とは何でしょうか?よく103万円の壁という言葉を耳にしたことがあると思います。「106万円の壁」と「103万円の壁」は何が違うのでしょうか?その壁がなくなるとは、どういうことなのでしょうか?

いろいろ疑問はあると思いますので、分かりやすく説明したいと思います。

まず「103万円の壁」 = 税金の壁 です。

これに対し「106万円の壁」 = 社会保険の壁 です。

この基本的な違いを知っておいてください。103万円の壁のほうは、すでになくなっており、もっとややこしくなりました(笑)

で、106万円の壁のほうですが、これはざっくり言うと「年収がこの金額を超えたら社会保険の加入が必要になるよ」という基準線のことを言います。つまり年収106万円=月額8.8万円以上稼ぐようになったら、社会保険に加入しなければならないということです。 

(※これは企業の厚生年金被保険者人数50人超の会社の話。だからこれ以下の規模の会社には関係ない=106万円以上稼いでいても社保加入しなくてよい。)

◆なぜ「壁」なの?

なぜこれが「壁」と呼ばれるのか?これは労働者側から見た場合と、社会保険の制度側から見た場合、それぞれで何かを阻む「壁」として作用するためです。

労働者側から見た場合、本人がもうちょっと稼ぎたい・働きたいと思ったとしても、年収106万円に達してしまったら、急に社会保険料負担をしなければならなくなります。その負担を嫌がって、働き控えをしてしまう人が現れます。つまりこの場合、106万円は「もっと働いて稼ぐ」ことを阻む「壁」なわけです。

社会保険の制度側から見た場合も、106万円を超えてくれたら加入者が増えます。加入者が増えれば保険料収入が増えます。ところがみんな106万円のところで調整をしてしまい、なかなか加入者が増えません。こちらは106万円が、加入者増=保険料収入増を阻む「壁」として作用しています。

今回の改正によってこの「壁」がなくなります。

◆「106万円の壁」がなくなるのはいいこと?

では「106万円の壁」がなくなるとはどういうことなのか?それは労働者にとって嬉しいことなのか?

106万円の壁がなくなる = 年収と関係なく社保加入義務が生じる ということです。

では今後は何が社保加入義務を左右するのかというと、「週の所定労働時間20時間」が大きな基準線になります。

平たく言えば週20時間以上働くなら、年収がどうであろうと社保加入ね♡というわけです。

社保加入=保険料負担の増大、とネガティブに捉えるのであれば、労働者にとっては嬉しくない変化なのかもしれません。

ただ厚労省の基本的な発想は、「みんな社保入りたいよね。入りたいに決まってる。社保に入りやすくなって良かったね」というものです。社保に入る=補償が受けられる=嬉しいこと、という発想に立つならば、労働者にとって喜ばしい変化と言えます。ま、確かに厚生年金に入ることで将来の年金額が増えるのは事実ですからね。

◆国は社保加入者を増やしたい

ところで、先ほどカッコ書きの中でこの話が企業規模50人超の会社の話だと留保しました。

実は今回の改正ではこの企業規模要件も段階的な廃止が決まりました。それによると10年後には企業規模要件も完全に消えます。つまり年収がいくらか、どのくらいの規模の会社かは、社保加入義務とは関係なくなるということです。もう週20時間以上働くなら(学生でない限り)社保加入しなければならない。

全体に何が起こっているのかを総括して言うと、国は社会保険制度を維持したいので、より多くの人が社会保険に加入しなければならないように法改正された、ということです。

保険料率を上げると反発も大きいですからね。保険料率で収入増は狙えない、だから加入義務を広げて、より多くの人を加入者にしてしまおう、そういう発想なのでしょう。

人口減少に加え、少子高齢化という現役世代の減少と受給世代の増大が起きているのが今の日本です。そのような社会で社会保障制度を維持しようと思えば、何らかの負担増は避けられません。嫌なら給付を減らすよりほかない。

政策としての是非はあえて判定しませんが、時代状況として今後もこうした負担増のトレンドは続くでしょう。給付を諦めて負担を軽くするか、高負担を引き受けて給付を維持するか、はたまた圧倒的な経済成長で全てをひっくり返すか。選択を迫られ続けますね。

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