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最近、「金融所得にも社会保険料を掛けよう」という議論が、ひそかに進んでいます。

Youtubeでも一部にはその動きに反応した動画が登場しています。

例えばこちら。

【参院選】選挙に行くしか対策なし!コレで私たちの一生涯の税金が決まります。

実際に自民党のHPでも「社会保険料等に金融所得の適切な反映を」ということで、大真面目に主張されています。

◆なぜ金融所得に社会保険料なのか

平たく言えば社会保険の各種給付を維持するために、お金が足りないから、国民各自が行っている投資の利益からも社会保険料を取りたいということです。

現状でも、投資の利益を確定申告している場合には、社会保険料が徴収されています。

ただ多くの人は証券口座を「特定口座」にして、利確時に自動的に源泉徴収される設定にしています。この場合は、確定申告が必要なく、社会保険料もかかりません。

そこで「公平」を期すために、源泉徴収されている場合でも社会保険料を取ろうと主張されているわけです。

どちらからも社会保険料を取らないという選択をしても「公平」は実現されますが、それは制度を維持する上でマイナスということで、そのような発想にはならないのですね。

◆国に依存した国民を生み出す本末転倒

しかし、そもそもNISAやiDeCo、あるいは日本版401kといった庶民向けの投資制度は、年金や医療といった公的な社会保障に頼らずに済む国民を生み出したいという意図の下、整備されてきたもの。

2015年のニッセイ基礎研究所のレポートには次のようにあります。

家計の資産形成を促進することの重要性については論を待たない。特に退職後への備えは重要だ。方針の決定に至る過程で紆余曲折はあったものの、この4月からは公的年金のマクロ経済スライドが実施される。少子高齢化の進んでいく日本において公的年金が果たすことができる役割は確実に小さくなっていく。また、企業も確定給付年金の有期化や確定拠出年金への移行などを進めてきた。これまで退職者の家計を守ってきた機能は、今後ますます弱体化する一方だ。

公的年金が「これまで退職者の家計を守ってきた機能は、今後ますます弱体化する一方だ」という認識ですね。そこでNISAなどの諸制度を通じて「家計の資産形成を促進すること」を図ろうということです。

つまりこれらの投資行動から生まれた利益は、本来、年金をはじめとする公的な社会保障の穴埋めとして使われることが期待されていたのです。自分のことは自分で賄えるようになって欲しい、という国の意図があるわけです。

それは当然、「自分の」医療や年金の補完であるわけで、他人の医療や年金の補完目的ではありません。

その利益から社会保険料を徴収するというのは、老後の資金計画を大きく狂わせるものであり、そうなると今度は公的な社会保障に依存する国民を生み出すことに繋がってしまいます。これではまるで本末転倒です。

しかもいわゆるサラリーマンが行う投資行動の場合、給与からすでに税金と社会保険料は控除されているわけです。その残りを投資に振り向けているのに、その利益からも社会保険料を取られたのでは、感覚的には二重取りされているようなものでしょう。

◆求められているのは産業政策では?

他方で社会保障制度を維持しようと思えば、当然、どこかからその財源を引っ張ってこなくてはいけません。

一般的には金融所得の多い人ほど、富裕であるということは言えるでしょうから、富の再分配という観点から言うなら金融所得からの社会保険料徴収は理にかなっているとも言えます。

とはいえ社会保険料は既に給与の30%にも達しているわけで、これ以上取られたら現役世代はいよいよ老後を考えられなくなってしまいます。

唯一、誰も傷まない解決策があるとすれば、有効な産業政策を打って、社会の富を根本から増大させることです。そうすれば料率を維持したままでも、社会保障を支えることが可能になります。安定した社会保障制度があれば、少子化傾向にも歯止めをかけられるかもしれません。当然、人口減少も止まり、現役世代が増えてくれば制度はますます安泰です。

もはや負担を増やすことで制度を維持するというのは限界に来ています。

だからといって目先の負担減を追求すれば、今度は給付が減って、結局自力で何とかせよという話になってしまう。

今、減税や社会保険料負担の軽減を訴える政党がたくさんありますが、産業政策を示して「こうやって富を増やしましょう」と未来を描けている政党はなかなかありません。

難しい問題ですが、少なくとも「金融所得に社会保険料をかける」というのは、上記したように却って公的な社会保障に依存する国民を生み出すことになるでしょうから、合理的な政策とは思えません。少々目先にとらわれ過ぎていると思います。

まもなく参院選の投票日。

油断していると我々の財産は、とめどもなく吸い上げられてしまいます。

投票には行きたいものですね(小林は期日前投票を済ませています)。

Youtubeもやっています